なにわ法学研究所>資料室>同性婚に関する大島試案(2005/12/10)
同性カップルに法的保護を付与する法制度を構築するための論点整理
なにわ太郎
なにわ法学研究所

同性カップルの生活共同体に法的保護を与えるためには、法のもとの平等の原則からして同性婚を容認するのが最も簡明な方法である(甲案)。次善の方策として、諸外国の生活パートナーシップ法あるいはシビル・ユニオン法に類似した特別法を制定するという方法が考えられる(乙案)

甲 案
第1 憲法24条1項を次のように改正する。
(現行法) 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本とし、相互の協力により、維持されなければならない。
(改正案) 婚姻は、両当事者の合意のみに基づいて成立し、両当事者が同等の権利を有することを基本とし、相互の協力により、維持されなければならない。
第2 「同性者間の婚姻を認め、関連する諸規定を改正するための法律」を制定する。そして、わが国の法律を精査して、必要な改正を施す。
 たとえば、民法755条の「夫婦」を「両当事者」と改正する。

乙 案
「生活共同体に関する法律」(仮称)を制定する。
第1 法律の名称
A案 「生活共同体に関する法律」とする。
B案 その他の名称を採用する。
第2 法律の対象
A案 同性間の生活共同体に限る。
B案 同性間の生活共同体に限定せず、異性間の生活共同体も対象とする。
第3 生活共同体の成立
1 届出 (739条〜740条)
2 生活共同体を形成しようとする意思(738条)
第4 生活共同体の有効要件
1 適齢 
1) 男性については18歳、女性については16歳とする(731条)。
2) ただし、未成年者については父母の同意を要する(737条)。
注 私見は、立法論としては、成年を18歳に引き下げるとともに、未成年者の婚姻を否定すべきであると考えるが、現行法を前提として、それと同様にしておく。

2 重複の禁止
1) 配偶者のある者は、共同生活体を形成することができない(732条)。
2) 共同生活体を形成している者は、別の生活共同体を形成することができない。

3 近親者間における生活共同体の禁止
1) 直系血族間における生活共同体の禁止(734条)
2) 直系姻族間における生活共同体の禁止(735条)。
3) 3親等内の傍系血族間における生活共同体の禁止(734条)。
4) 養親子間における生活共同体の禁止(736条)

A案 原則として、養親子関係の解消後にも、元の養親子間における生活共同体の形成は禁止する。ただし、例外として、既存の養子縁組を無効とする家庭裁判所の審判を得た後に、生活共同体の形成を容認するための特別規定を置く。
(理由) これまで、わが国には同性婚あるいは生活共同体の制度が存在していなかったために、同性カップルの中には、便法としての養子縁組をしている例がある。そのようなカップルに関して家庭裁判所の関与のもとに、例外的に生活共同体の形成を容認すべきである。

B案 原則のみにとどめ、上のような例外を規定しない。

4 無効・取消し
上の要件を満たしていない生活共同体について無効・取消しの規定を置く(742条〜749条)。

第5 生活共同体の効力
1 氏 
1) 同氏の原則(750条)
注 私見は、婚姻の場合についても夫婦別氏の可能性を容認すべきであると考えるが、現行の婚姻法を前提として、それと同様にしておく。
2) 生存当事者の復氏(751条)

2 同居・協力・扶助義務(752条)

3 貞操義務

4 成年擬制(753条)
注 私見は、立法論としては、成年を18歳に引き下げるとともに、未成年者の婚姻を否定すべきであると考える。そうすれば、成年擬制の制度は不必要になる。しかし、現行法を前提として、 それと同様にしておく。

5 当事者間の契約取消権(754条)
注 私見は、立法論としては、夫婦間の契約取消権について規定した民法754条を削除すべきものと考えるが、現行法を前提として、それと同様にしておく。

6 姻族関係の発生
A案 生活共同体の成立によって、当事者の一方と相手方の血族との間に姻族関係が発生する。
B案 生活共同体の成立によっては、姻族関係は発生しない。
第6 生活共同体の財産制
1 生活共同体の財産関係(755条)
2 生活共同体の財産制度に関する契約(756条〜759条)
3 法定財産制
1) 生活共同体費用の分担(760条)
2) 日常家事債務についての連帯責任(761条)
3) 共有の推定など(762条)
第7 民法、その他の法律における生活共同体の取扱い
1 相続分については、生活共同体の当事者を配偶者とみなす。
2 遺留分については、生活共同体の当事者を配偶者とみなす。
3 養子縁組については、生活共同体の当事者を配偶者とみなす。
4 税法上、生活共同体の当事者を配偶者とみなす。
5 社会保障法上、生活共同体の当事者を配偶者とみなす。
6 その他、法律上、生活共同体の当事者を配偶者とみなす。
第8 生活共同体の解消
1 協議による解消
1) 届出 
2) 生活共同体を解消しようとする意思
3) 解消後の子の監護に関する事項の定め
4) 解消の無効・取消し
2 裁判による解消
1) 具体的な解消原因(770条1項1〜4号)
  不貞行為
  悪意の遺棄
  3年間の生死不明
  強度の精神病
2) 抽象的な解消原因(770条1項5号)
  生活共同体を継続し難い重大な事由
第9 生活共同体の解消の効果
1 解消による復氏の原則(767条) 
ただし、本人が希望する場合には、元の氏の続称も認める。
A案 生活共同体の継続期間の一定の長さを要件とせずに、解消前の元の氏の続称を認める(767条2項)。
B案 生活共同体の継続期間の一定(最長で7年)の長さを要件として、解消前の元の氏の続称を認める(816条2項は、養子縁組の場合について7年間の継続を要件としている)。
2 財産分与(768条)
3 姻族関係の終了(728条)
第5-6において、A案(生活共同体の成立によって、当事者の一方と 相手方の血族との間に姻族関係が発生する)を採用した場合には、生活 共同体の解消によって、姻族関係が終了する旨の規定を置く。
注1 括弧内の参照条文は民法の婚姻に関する規定である。
注2 私見は、甲案と乙案とでは甲案が望ましいと考え、A案とB案とではA案が望ましいと考えている。

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